3時間ぐらいかけて Poincare予想を眺めてみる
しつこく、ポアンカレ予想について書いてみます。趣味です。面倒くさかったけど今回は絵も描きました。ケツの穴みたいなもんだけど。
前々回では前ふり、前回はトポロジーの「同相」について書いてあるので読め! いや、読んでね。
3次元多様体
3次元多様体が何か、というよりなぜそんな概念を導入しなきゃいけないかっていうのは直感的には理解しにくいのかも。一般相対性理論のブラックホール周りの説明で用いられる「空間が曲がっている」っていう表現。あれを表現するために 3次元多様体とかがある、といえばすこしは想像つくだろうか。今回の話はトポロジーに限っているので「曲がっている」とかいう性質は扱えない *1。でも空間がどうつながっているのか、とかいうことはトポロジーで扱える。というよりそのためにトポロジーはある。
2歩戻って 1次元多様体
で、3次元空間がどうつながっているかは難しいので、次元を下げて 1次元多様体を考えてみる。
1次元多様体ってのは、ありていに言えば線だ。トポロジーなので、曲線、直線、折れ線を区別することはない。でも分岐、交差はしちゃいけない。千切れてる (点線みたいなの) は本来okだけど、ややこしいから、ここではつながってる (連結してる) ものだけに話を限定させてください。
線は簡単に想像することができて、紙の上にも描くことができる (いや、本当は太さもないんだけど)。でも重要なのは、「線の中にいる人」でも「われわれの線はどういう形をしているのか?」っていうのが考えられるってことだ。3次元に応用すれば、3次元空間の中にいる俺たちも「俺たちのいる空間ってどういう形? 平らな空間 *2じゃなくて知らない方向に曲がってるんじゃないか?」ってことを考えられる。実際に Einstein は曲がってることを発見しちゃったわけだ。
線の形っていっても、境界のない 1次元多様体の形は二種類しかない。開いているか、ループになっているかだけだ。
境界があるのまで話を広げると、ループになってない 1次元多様体は 3種類に増える。片方に境界があるのと両方に境界があるのだ。つまり全部で 4種類。つながっていない点線みたいのを入れるとそれは無限に増える。
コンパクト
さて、ここで「コンパクト」っていう概念を導入させてもらう。日常用語のコンパクトと関係あるのかもしれないが、とりあえずは「変な数学の用語だな」と思ったほうがいい。
コンパクトっていうのはループになってる線と無限に伸びた線を区別するためにできた概念だと思っていい。ループになっていれば大きさは有限だ。無限に伸びた線と簡単に区別できそうだ。でもトポロジーの世界に大きさはない。さらに踏み込むと、 っていう有限の大きさの線分と無限に伸びた直線は同相であること、つまりトポロジー的には同じものであることが証明できる。つまり「大きさは区別には使えない」。
でもそこを区別するようにするのが「コンパクト」って概念だ。定義はややこしいけど直感的にいえば「無限の大きさに引き伸ばすことはできない」って感じ。しつこいようだけどトポロジーには「大きさ」って概念はないけど。
ループした線はコンパクトで無限の直線はコンパクトではない。実を言うと境界がある 1次元多様体 もコンパクトだ(不等号に '='が入っているのに注意!)。
京大公開講座のテキスト(PDF) では以下のようになってる。
M がコンパクトであるとは、n 次元球体Dn に同相な有限個の部分空間の和集合となっていることをいいます。
なるほど、そういう風にもいえるんだ。有限で境界があるものを有限個合体させてできるってイメージかな。