情報劣化を加速させるGoogleの「無脳」さ

弾さんの、「ゴミなきところに知なし」にある「生産というものはゴミの山から宝を掘り出すこと」という比喩はまっとうだ。ただ、まっとうすぎる論旨と弾さんの博識とレトリックがあいまって、小さな変化を力技で押しつぶしてしまっている気がする。知的生産の生産性を、カミオカンデニュートリノ検出率というまったく関係ないものと比較するあたり、まっとうさにしがみつく強引さを感じた。
んじゃ、小さな変化ってなに?ってつらつら考えていたらなんか話の筋が通ってしまった。妙に綺麗にまとまったので、逆に怪しいぐらい。多分穴だらけだと思うけど、捨てるのももったいないので上梓しよう。ほら、やっぱりもしかするとブクマされるかもしれないし。
そもそも元となるentryで問題意識はそれぞれ違う、のでそれをまとめよう。「情報の消費行動がもたらすネットの変化」 では、blogというものによる情報の断片化が問題にされている。「ネットにおける非対称戦」では読み手が増えることによりレベルが下がり、より多くのエクスキューズが必要なことを嘆いている。それを元に「そろそろ」では

「もはや知的生産の道具としては役に立たなくなった」ということなんじゃないかと。

とまとめている。いずれにしても blogや検索により集まる情報の質が下がったと嘆いているわけだ。

そんな変化が起こった要因は以下の三つじゃないかな、というのがこの entryの論旨だ。

  • Googleの強力さ、無脳さ
  • Blogの SEO能力の高さ
  • 2ch文化の爛熟

Googleの強力さはいうまでもない。サーチエンジンとして、有用な情報を非常に手軽に見つけてくれる。
その一方で「無脳」だ。有能に見えても意志を持っているわけではない。冷徹無私なアルゴリズムによる評価は、一切のバイアスを排除する。もちろん、これはよい意味で評価されることがおおい。
そして、Blogはそういう Googleを前提として成長してきた。トラックバックなど、PageRankを吊り上げるような機能が満載だ。日本でもWeb日記文化などを吸収し、そしてどんどんと新しいパイを広げている。何しろ世界で書かれる blog entryの1/3弱は日本語なのだから。
そしてもう一つ、2chのことを忘れてはいけない。罵詈雑言が飛び交い、便所の落書き痰壷、犯罪者予備軍のすくつ(なぜか変換できない)などの蔑称をものともせず、いやむしろ誇らしげに掲げ成長してきた掲示板群だ。その中では匿名をいいことに他人をネタにしようと、どうでもいいことに食いついて炎上させたりしている。
爛熟した 2ch文化が、2chの中にとどまってたまに Googleに引っかかるぐらいならよかった。結構そういう記事も役にたった。主に技術系だが。
でも、2ch文化は 2chの中にとどまらなかった。切込隊長をはじめとして、blogの世界に飛び出してしまったのだ。そしてそこで早速始まる獲物探し。自分では関心はないが、ネタに参加するためだけに言及するトラックバック2ch文化と blogのSEO能力が結びついてしまった。
そんなページを無脳な Google様は検索のトップに出してきたりする。そしてそんな空気は Googleをみた、2chを知らなかった人たちにまで伝染する。こうやって、Google - Blog -2ch文化の正のフィードバックは回り始める。そうやって広がる blogosphere
まあ、そんなにたいした変化ではないのかもしれないけど、それがだんだんとこうやって疲弊として見えてきてしまったのかなあ。

いや、例によって分析するだけで対策なんて出せないけど。落ちとしては、国産サーチエンジンは日本の特性を理解して、無脳さがもたらす悲劇を回避できるといいなあ...なんて書いてみたけど、無脳のよさを逆にぶち壊す、箸にも棒にもかからないものができそうだな。