ゲーム中毒は精神障害か?
俺はゲーム好きを自称しているので、最近のゲーム脳などには批判的である。そういうなかでゲーム中毒を精神障害にするよう提言されたという IT Mediaのニュースに出会ったのでちょっとむっとした。同時にアメリカの学会 (AMAってどの程度権威があるかしらんが) の提言だということで、「そういうもんかもなあ」と思ってしまう弱い自分がいた。
しかし考えてみると自称をしてはいるが、最近はちっともビデオゲームをやっていない。最後にまともにやったのは Mother3だ。別に俺がキチガイ扱いされてるわけじゃないんだから冷静に考えてもいいんじゃないか。ちょっと落ちついて中を見てみよう。
精神障害とはなにか??
落ち着いて、精神障害に分類するっていうのはどういうことなんだろ? 以下の段落に集約されている:
このことから、同学会は「インターネット/ビデオゲーム中毒」を「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)IV」の次の改訂版に正式な診断名として含めることを「強く推奨」している。ゲーム中毒は、このマニュアルに掲載されている症状の中では「病的賭博」と最も行動パターンが似ているという。
林先生のファンでもある俺は、DSMって単語ぐらいはきいたことがある。あらためてWikiPediaで見てみると、いろいろ改訂されたなかの 4番目が DSM-IVだそうだ。つまり DSM-Vに含めることを「強く推奨」しているわけだろう。
ギャンブル中毒との類推
これがどのような意味、重みをもつのか、というと、文の中にある「病的賭博」ー っていうかおれはギャンブル中毒って言葉しか知らなくて、政治的に正しく訳すとそうなるのか、と思ったのだが − との類推すると分かるだろう。
アメリカではギャンブル中毒 (正確には依存症) はそれなりにでかい問題だ。よくラジオなどでも Gamblers Anonymous (ギャンブル依存症患者の更生団体) の CMをきく。
日本でもきっとそれなりに患者はいるはずだと思う。アルコール依存症と同じで、それを社会問題や病理的問題と思わず、個人の資質に帰着させてしまうのが日本なんだろうな。それが悪いとはすぐにはいわないが。
ギャンブルのメッカ Las Vegasどんな具合かはラスベガスニュースに詳しく載っている。
また、ギャンブル依存症はアルコールやドラッグの依存症と同様、精神および脳機能の障害であることがわかってきている。米国精神医学者協会は 1980年、ギャンブル依存症を 「Pathological Gambling」とし、正式に精神障害として認定している。また、フランスの国立科学研究センターも同様な研究結果を今月 20日付の米科学誌サイエンスで発表した。
ギャンブル依存症はすなわち、単なる生活態度ではなく、れっきとした 「病気」 なのである。「ギャンブル依存症患者は、大金を手にするためにギャンブルをしているのではありません。欲に動かされてスロットマシンの前に座っているのではなく、『ギャンブルせずにはいられない』 という強い内的な衝動によってギャンブルをしているのです」 とオハラ氏は説明する。
こうやってみれば、ギャンブルという (たぶんゲームファンにの多くにとっては) 他人事を通して、AMAが何を狙ってゲーム中毒という病気を作ろうとしたかわかってくるだろう。
つまり「ゲームをせずにはいられない」という内的衝動によってゲームを続けてしまい、本当に病的に社会生活に影響が出るぐらいの人を救う為のものだ。逆にいえば「ゲームが好きだ」ってぐらいのカジュアルゲーマーを差別しようとした教育ママ的な意図ではないことを理解したい。
そこまで理解した上で、精神障害としてゲーム中毒が認められるのには俺は賛成だ。
なんなら、それで救われる人も多いだろうから。思い返せば学生時代はゲーム中毒だった。寝ても覚めてもゲームのことを考え、ゲームのために約束をすっぽかす。あれが続けば、精神病でもなんといわれても救ってほしいと思いたくなる。
妥当かもしれないが..
以上、肯定的に書いたがやっぱり心配なことがある。
マスコミや大衆は果たして AMAのそういう意図を理解してくれるのか、ということだ。煽ったり、過剰に反発したりしないだろうか。現に最初の記事のはてブでも... あ、これはみんな冷静なコメントが多いな。煽ろうと思ったら失敗した。
でも、ゲーム脳を担ぎ上げたマスゴミは、これに乗じてひと暴れとかしないだろうか。そして自治体が迎合するママたちへ講演会をしたりして。ありそうでこわい。
今のうちに釘を差しておくと、ゲーム中毒だけ取り上げないで、アル中やギャンブル中毒もちゃんと報道しろよ! そっちのほうがよっぽど社会的にでかい問題のはずだ。