犯罪工学

とある誘拐ものミステリを読んで思ったことが、やっぱり無茶な話だなと。最後に明かされるトリックとして身代金をごにょごにょしてたというのがあったので *1

偶然そんな事件にあった人がそんなにとっさに頭を働かせて、しかもどう転ぶかわからない賭けをするかなと。小説内ではそれがうまく運んで、やった人の意図どおりになるのだけど、でも実際人間の心理として以前にやったこともない、理論だけしかよりどころにもないことをやるかなと(理論が、思うに穴だらけだったりするんだけど)。それをやるのが、冷徹で計算高いという設定の人間だったりするともう興ざめもいいところだ。

そういうのに対して工学的な視点を持ち込んでみたらどうなんだろう。

たとえうまくいきそうだとしても、試行もせずに行動にでるとは思えない。試行できないなら、それなりに実績のある代替手段をとるんじゃないか。それが「冷徹で計算高い」人間のとる選択肢だろう。なにしろ発覚すればとてつもないマイナス評価があるのだから。やっぱり歩留まりとかそういうのを直感的に考えるようじゃないと。

逆に言えば、警察とかは工学的な視点を持ち込んでいるから、局所的には負けても全体としては勝ちを納めるわけです。こういう犯罪に対しては、こう対処した方が成功率 60%でうまくいくとか。初めて犯罪に手に染める小悪人とかとは、基礎となるデータが違う。

もう一段階逆を言えば、暴力団とかは、そういうのも踏まえて工学的に罪を犯す方法を学んだ集団なんだろう。たとえ捕まっても刑を軽くする為のリスクマネージメントとか、鉄砲玉になっても娑婆に戻ったら出世させてモチベーション作りとか。

そういう意味で見せてほしい犯罪というのは、既存の犯罪工学を作り替えてしまうような、あっと言うようなものなのかもしれない。不謹慎ながら、グリコ森永事件の時期待したものはそういうところだったのかもしれない。

あと、個人的にはミステリ作家を理系・文系・工学系にわけて作風を比較してみるとかできたら面白いかな。森博嗣とか、工学出身のくせに「すべF」は犯罪工学的に見るとダメダメっぽいが*2

*1:ネタバレになるかもしれないので作品名も明かしません。まあ最近のものです

*2:「すべF」で閉口して、それ以外の作品は読んでないので、他に飯野があったらすみません