炉心の中心でこの先生きのこれるか?


「放射線を食べる菌」
ってネタは、多くの人の琴線に触れて多数ブクマされてるよう。


正しいよな。今まで「毒」としか思われてなかった放射線を有効活用する生物が出てくるなんて。こういう人知を越えた小粋な技を見せてくれるからこそ科学っていうのは面白いっすね。


まさに事実は小説より奇なり、とか書きたくなるけど、このアイディアは小松左京の小説にすでにあります。それなんて XXX と書きたくなったけどネタバレになるので止めときます。


閑話休題、例によってこのネタをもう少し深く突っ込んでみました。


元ネタのFox Newsのよりも、英語版 Wikipedia他の生物のメラニンの項目から参照されているSciense Newsの記事の方が詳しそうっす。


今回、Chernobylの炉心で見つかって話題になってるのはCryptococcus Neoformansという種です。放射線に耐えて繁殖していただけではなく、放射線 (γ線X線ですね) を「エサ」にしていたらしいと。


念のため、放射線(γ線とか) と放射能物質 (ウランやプルトニウムとか) は別物です。前者が「可視光」だとすると後者は「電球」のようなもの。植物が可視光を餌にしているといっても、電球をバリバリ喰うわけじゃありません。同じように、今回のカビもプルトニウムとかを喰うわけじゃない。もっと進化すると体の中に積極的に放射能物質を取り入れる種とかもできるのかもしれませんが。カコイイ!


研究チームのリーダ Casadevallはメラニン色素 (人間にもある日焼けを起こすやつ) が鍵を握っていると睨んでるよう。そのための実験では:


To test this hypothesis, Casadevall's team exposed colonies of C. neoformans to gamma rays 500 times as intense as the normal radiation background on Earth's surface. The colonies grew up to three times as fast as normal. A mutant "albino" form of the fungus, which produced no melanin, grew at a normal pace, the team reports in the May PLoS ONE, an online journal.

仮説を確かめるために Casadevallのチームは C. neoformansのコロニーを、通常の地上の 500倍の強さの γ線に被曝させた。このコロニーは通常の3倍の早さで育った。メラニンを作らない「アルビノ」の突然変異種は、通常の早さであった、とチームは PLoS ONE オンラインジャーナルにこの五月に発表した。
かなり因果関係を伺わせる結果を出してるわけですね。


いずれにしても、この生化学的なメカニズムについてはクロロフィル光合成ほどは解明されていないので、まだ放射能物質からエネルギーをとりだせてるとは結論付けられてないようですね。ましてや有効活用はまだまだでしょう。


素人考えでは、この Cryptococcus Neoformans、以前から放射線によるエネルギー合成をする能力を持ってたんじゃないでしょうか。今回見つかったのも変異種じゃなさそうだし。


35億年ぐらい前の地球上にはまだ、放射能物質もそれなりに露頭してたのかも。オゾン層もなかったから、宇宙からも放射線降りまくりだし。そんな中、光合成生物より先にメラニンで栄養をとる生物が一定のニッチを得ていたとか。それがいままで能力を残したまま有効活用せずに生きのこってきたと。


最後は夢想しすぎかな。まあ、無責任なblogだし、この位許してください。