トリックはトリックの顔をして歩いていない

はてブで人気になったクイズがある。ネタばらしをするので、気になる人はコメント欄まで読んでおいてほしい。
はっきり言って出来のいいものではない。1分も考えずに正解にいたって「どこに落とし穴があるんだ?」と思った。もちろんこれは自慢だ。
おれは以下のような問題にある引っ掛けかと思った:


私は画廊で絵をみていた。そこに「息子」と題された子供の肖像画があった。
「この画家は最愛の息子さんを描いたんですね」と画商にいうと頷いた。
「父親の愛が表現されてますよ」というと、「いや、画家はこの子の父親じゃないですよ」といわれた。
いったい、画家と肖像画の子供の関係はどうなっているのか?
答えは中盤に。
閑話休題、なんでこんなクイズが人気になるかと思いつつ、id:ululunさんのコメントで腑に落ちた。「なぜこのクイズがトリックなるかの解説で一本エントリが書けそう。」そう、それにしたがって書き始めてみたのだ。
このクイズの鍵はやはり「最初に言うと、答えは2つあります。」なのだろう。そして、畳み掛けられるように「1つ目」の偽の回答を握らされてしまう。どう見たって 2つ目しか答えはありえないのに、それもありかと納得してしまう。
俺だって、これを「トリックがある」と思って読んだから騙されなかったのかもしれない。もっと日常会話の文脈で「でも、それって二つ答えがありうるよねー」とかいわれたら、そうかもなあ、と納得してたかもしれない。とくに、妙齢の女性からいわれたりしたら。
そういう意味で題名の教訓にいたる。トリックがあると分かっていたら、もうそのトリックは半分以上バレているのだ*1。日常生活において本当に重要なトリックはトリックの顔をしていない。「あ、わたしは普通の常識的なことですから、どうぞお気になさらずに」と石ころ帽子をかぶっている。
その点がこのクイズの一つの教訓とも言えるかもしれない。
でももう一つ教訓がある。
冒頭に出したクイズの回答は分かっただろうか? 答えはずばり「母親と息子」だ。ここで「そうだったか!」と膝を打ってもらえると光栄である。画家=男性という先入観を利用して引っ掛けたつもりなのだが、引っ掛かってくれた人はいるだろうか?
この問題を先に知っていたせいで、冒頭の問題に対しても俺は性別に気をつけた。いずれも「息子」「父親」と性別をはっきり示していたので、簡単だけど正解に達した。そのおかげで、問題を精読でき、本来のトリックに引っ掛からなかったようだ。
一般化すると、「一つの知識は、別の勘違いも防ぐことがある」ってことだ。性別を気をつけているおかげで、別の変なことに気づくかもしれない。実体験でもこういうことは多い。知恵があると、その周辺までかバーしてくれたりするもんだ。
とかエラそうに書いているけど、もしもここで最初の blogの筆者が「今までは釣りで、実は本当に二つ目の回答がありました」とかいってすっげー腑に落ちる答えを提示してくれたらどうするんだろうね、俺。いや、そうなったらそうなったで楽しみだ。

*1:そういう状況でトリックを成立させるからこそ、奇術師は素晴らしい